君想い、君に揺れ、君と歩いたこの道。
The day of blue graduation
春は別れの季節。
職場や学校など、いろんな場所でいろんな別れがある。
けど僕はそういった別れでネガティブな気持ちになったことが、ここ最近なかった。
それは何かが終わる時は、何かが始まる時だからだ。
だから決して悲しい事ではない。もちろん寂しさもあるけど、何かからの卒業というのは何かへの門出だからだ。僕はそういう意味で、別れというものに対してはポジティヴに捉えているし、めでたい気持ちになる。
湿っぽいのが苦手、というのもあるけど新しい世界の扉が開くことへのワクワクと応援の気持ちが勝って悲しい気持ちになることはない。
そんな僕に、今日も一つの別れがあった。
彼と出会ったのは今からちょうど2年前。僕が22歳の誕生日を迎える直前の春だった。
彼の存在はずっと昔から知っていて、ずっと憧れていた。8歳の頃からの憧れだから、14年越しに念願が叶った。
そんな事もあり、その時の僕はとても浮かれていた。
朝起きられない癖に、彼との時間を少しでも多く取るために早起きして、出かけて行った。
その時はアルバイトをしていたので、朝から午前中一緒に出かけた後は、バイト終わりにはシャワーを浴びてまた出かけて行った。
彼はとても大柄で力も強かった。かつとても洗練されていたから、一緒にいると羨望の眼差しで見られていたし、絡まれる事もなかった。
決して派手ではないが、その洗練された美しさから圧倒的な存在感を放っていた。
一緒にいる事で僕自身も箔がついたし、最高の相棒であった。
そんな感じだったから、週8とか週10以上一緒だった。
彼にはいろんな事を教えてもらった。
洗練された美しさがもたらす、圧倒的存在感を。
地上にいるのにまるで空を飛んでいるような、圧倒的自由を。
情熱をかけられるものに出会った人間は、それまでとはまるで別人になることを。
一緒に過ごす時間の全てがかけがえのない物で、その全てが他の物ではけして得られる事がない体験だった。
彼と出会って1年が過ぎたころ、僕はサラリーマンになり長野へ配属になった。
いま僕が住んでいるところは彼には狭過ぎて、一緒に連れては行けなかった。
しかも休みの度に天気が悪く、一緒に出かけられなかった。
そうして一緒にいられなくなって丸2年が経とうとしていた頃、僕はある決断をした。
解放してあげよう、と。
いつかまた一緒に走りたくて、ずっと離れられないでいた。
しかし一緒に走る事を夢見続けても、叶わなかった。
けど彼はまだまだ健在なのに、このまま朽ちていくのが辛かった。
他の人と一緒であれば、まだまだ輝ける。
彼が使命を全うするために、僕は彼を解き放とう。そう思ったんだ。
そして今日、その日は訪れた。
サヨナラが決まった瞬間、今までの思い出がフラッシュバックして、思わず涙が溢れそうになった。
最後は笑顔でお別れをしようと思って、なんとか堪えた。
いまは涙を浮かべながらこの記事を書いている。
ただの物だけど、僕にとっては本当の意味で相棒だった。
当たり前のように思っていた3年間にいまは後悔している。たくさん走って、慣れた道も今は儚く思える。
最後に見たその姿は今までで一番カッコよく見えた。このさよならは消えない思い出になる。
ずっと一緒なんて叶わないのはわかってるけど、思い出す度胸が締め付けられるよ。
目を閉じると、真っ白な太陽の下で君と一緒に走る自分の背中が見える。
そこには輝いてる君と、高揚した気持ちの僕がいる。
ずっと忘れないよ、相棒。
心からありがとう。
2017.3.30